要点(30秒で): あるベンチマークで、Claude Codeはあなたの指示を1文字も読む前に約33,000トークンを送っていた——OpenCodeは約7,000。約4.7倍の差だ。だが「送るトークン量」だけを見て乗り換えるのは早い。キャッシュを含めた実費で自分のワークフローを一度測ってみるべきだ。

コーディングエージェントを使っていて、「思ったより高い」と感じたことはないだろうか。その理由の一端を、systima.aiという企業のブログが具体的な数字で突きつけた。

タイトルはそのまま挑発的だ。「Claude Codeはプロンプトを読む前に33kトークンを送る、OpenCodeは7k」。Hacker Newsでも大きな議論になり、賛否が真っ二つに割れた。

何が測られたのか

計測の対象は、あなたがエージェントに何かを頼む「前」に、ツールが勝手に送り込んでいる土台の部分だ。

内訳はシステムプロンプト、ツールの定義(スキーマ)、そして各種の注入されたscaffolding(足場テキスト)。Claude Codeはこの土台だけで約33,000トークン、OpenCodeは約7,000トークンだった。差はおよそ4.7倍。

Claude Code側の中身を分解すると、コアのシステムプロンプトが約2,900トークン、そこに20前後の組み込みツールの説明、Plan・Explore・Taskといったサブエージェント用の指示が積み重なる。さらにプロジェクト直下のCLAUDE.mdを読み込めば、そこにも約1,800トークンが乗る。

① あなたの指示を読む前に送られる「土台」トークンの内訳。Claude Code 約33,000 対 OpenCode 約7,000(差は約4.7倍)
① あなたの指示を読む前に送られる「土台」トークンの内訳。Claude Code 約33,000 対 OpenCode 約7,000(差は約4.7倍)

会話が進むほど土台が太る

もう一つ見逃せないのが、Claude Codeが会話の進行に合わせて<system-reminder>ブロックを差し込んでくる点だ。

記事の観測では、最初のターンで3つ、最初のツール往復が終わる頃には4つに増える。つまりscaffoldingがターン数とともに膨らんでいく。対してOpenCodeのターンごとの追加は、実測でおよそ数百〜2,200文字ほどで、その中身はほぼ純粋な会話内容だったという。

この「勝手に太る」感覚は、多くのユーザーが実感として持っている。実際、Claude Codeの公式リポジトリには、あるバージョン間(v2.1.89→v2.1.96、2026年4月初旬のわずか数日)で初期システムプロンプトが約70,000トークンも増え、頻繁に/compactしないとセッションが成立しない、という不具合報告まで上がった。HNのコメントで飛び交った「tokenflation(トークン膨張)」という造語が、空気をよく表している。

②「33k対7k」の見出しを覆す3つの逆転。トークン量だけを見ると必ず見落とす論点
②「33k対7k」の見出しを覆す3つの逆転。トークン量だけを見ると必ず見落とす論点

なぜAnthropicはこの重さを選んだのか

ここで一方的に「Claude Codeは無駄が多い」と断じるのは、たぶん公平ではない。

Claude Codeの重いプロンプトは、Anthropic自身のキャッシュ経済に合わせて設計されている。静的な部分を一つのキャッシュブロックに、セッションごとに変わる部分を別のブロックに——という構造で、プロンプトキャッシュとネイティブなツール呼び出し、そしてClaude自身の長文脈での振る舞いに最適化されているわけだ。

Anthropicの料金体系では、キャッシュへの書き込みは通常入力の1.25倍(5分キャッシュ)と割高だが、読み込みは約0.1倍、つまり9割引になる。同じ土台を一度でも再利用すれば元が取れる計算だ。だから2ターン目以降、この33kは9割引の価格で読み直される。HNでも「キャッシュが効けば、実費は1桁のセント」という指摘が出ていた。

AIのコストが「学習より推論」で決まる時代の力学については、GLM 5.2が突きつける「AI利益率の崩壊」——本丸は学習でなく推論だったでも掘り下げた。土台の重さは、この推論コストの話と地続きだ。

③ 乗り換えを判断する前にやること。従量課金・APIキー直叩き環境ほど効く5項目
③ 乗り換えを判断する前にやること。従量課金・APIキー直叩き環境ほど効く5項目

ただしキャッシュ書き込みの量が跳ねる

もっとも、キャッシュがあるから安泰、で終わる話でもない。

記事によれば、同じタスクでもキャッシュの「温度」(どれだけ再利用が効くか)次第で、Claude Codeのキャッシュ書き込み量はOpenCodeの5.9倍から54倍まで振れた。書き込みは割高な側なので、キャッシュが温まりきらない使い方——短いセッションを何度も立ち上げる、頻繁に文脈が変わる——だと、割引の恩恵より書き込みの割増が勝ってしまう場面がある。

さらにAnthropicは2026年初頭、プロンプトキャッシュの有効期限を静かに60分から5分へ短縮した。本番ワークロードによっては、これだけで実効APIコストが3〜6割上がったとも報じられている。キャッシュは万能の盾ではない。

MCPを積むと景色が変わる

ツール定義の話には、実は逆転がある。

外部ツールをMCP(Model Context Protocol)で大量に繋ぐと、その定義だけで一気に膨れる。たとえばGitHubのMCPサーバーは、最初のプロンプト前に約42,000トークンものツール定義を注入する——200Kの窓の実に2割強だ。

ここでClaude Codeは「遅延読み込み」に近い設計を取り、MCPツールは名前だけを文脈に入れ、実際に呼ぶ時に初めてフル定義を展開する。一方でOpenCodeには等価の仕組みがなく、繋いだMCPツールのフルスキーマが毎ターン全部載る。つまり素の土台では軽いOpenCodeも、MCPを積み増すと立場が入れ替わりうる。この非対称性は、単純な33k対7kの比較だけでは見えてこない。

「本当にそこを測っているのか」

Hacker Newsで最も刺さっていたのは、数字そのものより問いの立て方への疑問だった。

あるコメントはこう例えた。「これは、業者Aが3万3千円請求した、と言っているようなもの。仕事の出来を見ずに金額だけ比べていないか」。トークン量は入力コストの一部でしかなく、本当に効くのは「知性 × 費用 × 時間」だ、という主張である。記事の筆者自身も、次の更新でタスクの成果比較を加えると応じている。

裏づけになる別の実測もある。あるエンジニアが同じ計画を両者(Opus 4.5)に実装させたところ、Claude Codeは14分・約191kトークン、OpenCodeは27分・約278kトークン。土台は重いはずのClaude Codeのほうが、総トークンで軽く、しかも2倍速く、結果的に3割安く、コードの質も上だった、という。前段が重くても、往復回数が減れば総額は逆転する。エージェントとの「往復のしんどさ」をどう減らすかという論点は、「AIとの往復がしんどい」——HNで集まった”別のコーディング”12の型でも扱った通り、コスト議論の核心でもある。

この計測にも留保がいる

数字を鵜呑みにする前に、いくつか注意点も添えておきたい。

まずテストに使われたモデルはclaude-sonnet-4-5で、最新世代ではないとHNで指摘された。加えて、計測に使われたsystima自社のプロキシ「Meridian」自体が約6,200トークンを上乗せしており、これが結果を押し上げた可能性がある。第三者が同じ条件を再現しにくい、という弱点も残る。だからこの33kは「絶対値」ではなく、「桁感を掴むための一つの観測」として読むのが正しい。

日本・個人開発の視点

この話が個人開発者に効くのは、コストの主戦場が「月額サブスク」から「トークン従量」へ移りつつあるからだ。

サブスク定額なら土台の重さは体感しにくいが、APIキー直叩きや従量課金の環境では、33kの前提が毎セッション効いてくる。対策は難しくない。自分のよくやるタスクで実費(キャッシュ読み・書きを含む)を一度ダッシュボードで見る、サブエージェントには軽いモデルを割り当てる、CLAUDE.mdを太らせすぎない——このあたりだけで効く。HNでは「自作の素朴なエージェントなら桁が一つ変わる」「Piのように約1kトークンで済む軽量エージェントもある」との声も出ていた。重い純正か、軽い自作か。その選択肢を持っておくこと自体が、いまは資産になる。

要点まとめ

  • あるベンチマークで、Claude Codeはプロンプト到達前に約33kトークン、OpenCodeは約7k。差は約4.7倍。
  • Claude Codeの重さはAnthropicのキャッシュ経済に最適化された設計で、2ターン目以降は9割引で読み直される。ただしキャッシュ書き込み量は状況次第で相手の最大54倍に跳ねる。
  • MCPを大量に繋ぐ局面では、Claude Codeの遅延読み込みが効き、素では軽いOpenCodeと立場が逆転しうる。
  • トークン量だけでは優劣は決まらない。別の実測では、土台の重いClaude Codeのほうが総トークンで軽く速く安いという逆転も起きている。
  • テスト機はclaude-sonnet-4-5、計測プロキシ自体が約6,200トークンを上乗せ——数字は「桁感」として読むべし。

🐦‍⬛ 編集部の視点

この記事の一番おもしろいところは、実は「4.7倍」という見出しの数字ではない。HNのコメント欄で起きた、「で、それって測るべき指標なの?」という問い返しのほうだ。

私たちはつい、目に見える数字に飛びつく。33k対7k、わかりやすい。けれど、コーディングエージェントの本当のコストは、往復回数、キャッシュの温度、タスクの成否まで含めた総額でしか出てこない。前段が3万トークン重くても、一発で正解に着けば、何度も往復する軽いエージェントより安く済む。逆もまた然り。だからこの一件は、Claude CodeとOpenCodeのどちらが勝ちかという話ではなく、「あなたは何を最適化しているのか」を突きつけてくる。

そして忘れてはいけないのが、systimaは自社プロキシMeridianを持つ当事者だという事実だ。数字は誠実でも、比較には立場がにじむ。あなたのマシンで、あなたの実タスクで測った一枚のダッシュボードだけが、最後は真実を語る。今日、自分の請求内訳を一度開いてみてほしい。

出典・リンク

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